【筋トレ】大胸筋上部のトレーニングはフラットベンチプレスが最強!?

筋トレ

筋トレBIG3の種目の1つ、ベンチプレス。
胸を鍛えたければ、ベンチプレスをしておけばオッケーというくらい効果も知名度も高い種目です。

そこでよく言われるのがこんな公式。

大胸筋上部:インクラインベンチ
大胸筋中央:フラットベンチ
大胸筋下部:デクラインベンチ

前回の記事でも少し触れています。

綺麗な見た目の大胸筋を形成するために上部の大胸筋発達は欠かせません。
上部を徹底的に鍛えるためにインクラインベンチプレスを取り入れている人も多いと思います。

ですが、多くの研究ではこう言われています。
ベンチプレスにおいて、大胸筋上部を鍛えるにはインクラインベンチプレスよりもフラットベンチプレスの方が効果的である」と。

疑問さん
疑問さん

え!?そうなんですか?大胸筋上部のために、インクラインを取り入れてました。

ざっきー
理学療法士ざっきー

効果が全くないと言うことではありませんので、ご安心を。ですが、大胸筋上部のトレーニングにおいてインクラインベンチの優位性が認められていない傾向にあります。いくつか論文を見ながら考察していきましょう。

大胸筋トレーニングはフラットベンチプレスが最強!?

大胸筋上部強化にインクラインベンチプレスは不要?

早速、論文をいくつかみていきましょう。

論文①

フラット、インクライン、デクラインの3種目による大胸筋への刺激の違いを調べた半田らの研究1)によると、「大胸筋上部に関して、デクラインベンチプレス、フラットベンチプレスで同水準の大きな筋活動を示し、インクラインベンチプレスの筋活動水準が低く現れた」と報告しています。

なお、この時の条件は以下の通りです。

被験者:8名
重量:1RMの70%
・フラットベンチプレス
・インクラインベンチプレス(+60°)
・デクラインベンチプレス(-30°)
※スミスマシンでの計測

ちなみにインクラインベンチプレスは、フラットベンチプレス、デクラインベンチプレスと比較して、三角筋と前鋸筋に負荷が多くかかっていたことがわかっています。

胸よりも肩付近に負荷がかかるイメージですね。

結びの言葉では、大胸筋上部のトレーニングとしてはフラットベンチプレスが最も効果的として締めています。

論文②

次にChrisらの研究を見てみます。

Chrisらはベンチプレス時の肩関節周辺の筋活動に対して、傾きと手の間隔の変化による影響を調べました。2)

結果、大胸筋鎖骨部の筋活動に関して、インクラインベンチプレスはフラットベンチプレスよりもやや活発(a)、肋骨部においてはフラットベンチプレスがやや活発(b)であったとしています。(デクラインベンチプレスではより少ない筋活動であった)

なお、この時の条件は以下の通りです。

被験者:6名(ウェイトトレーナー)
重量:1RMの80%
・フラットベンチプレス
・インクラインベンチプレス(+45°)
・デクラインベンチプレス(-18°)
手幅:肩峰間隔100%のnarrow、肩峰間隔200%のwide

(a 参考文献2)より引用、編集)
大胸筋鎖骨部に関して、筋活動はインクライン>フラット>デクラインとなっています。

(b 参考文献2)より引用、編集)
大胸筋胸肋部に関して、筋活動はフラット>インクライン>デクラインとなっています。(ここでは手の間隔をワイドとした場合の数値を参考にしています。というのも、後述しますが、今回の研究でnarrowとして扱われている手の間隔は肩峰間隔100%であり、通常トレーニングで用いることのない狭さになっているからです。ちょっと狭すぎますね..。)

論文③

ベンチプレス時の傾斜、グリップ間隔の変化が及ぼす筋活動への影響を調べたAtleらの報告3)によると、グリップ間隔による影響が多少あるものの、傾斜による筋活動の有意な差は見られないとしています。

(参考文献3)より引用、編集)

なお、この時の条件は以下の通りでした。
被験者:12名(ベンチプレス経験あり、競技アスリート)
重量:6RM5セット
・フラットベンチプレス
・インクラインベンチプレス(+25°)
・デクラインベンチプレス(-25°)
となっています。

論文④

次に、ベンチプレスの筋活動と体幹角度の影響を調べたJakobらの報告4)を見てみます。

結果は以下の通りとなりました。

①バーベル下降局面
全ての区間において、フラットベンチはインクラインベンチ(45°)よりも大きな筋活動を記録した。

②バーベル上昇局面
26〜50%区間のみ、インクライン(30°と45°)はデクラインとフラットよりも大きな筋活動を記録した。
26〜50%以外の区間において、デクライン、フラット、インクライン(30°と45°)の間に有意差は見られない

なお、条件は以下の通りです。

被験者:14名(レジスタンストレーニング経験あり)
重量:1RMの65%
手幅:肩峰間隔150%
・フラットベンチプレス
・インクラインベンチプレス(+30°,+45°)
・デクラインベンチプレス(-15°)

この実験では、バーベルの下降、上昇局面において、それぞれの局面を4分割し大胸筋上部の筋活動を測定しています。

しかし、結果をみての通り、インクラインベンチ(30°と45°)がデクラインとフラットよりも大きな筋活動を記録したのは「バーベル上昇局面の26〜50%区間のみ」となっており、バーバル下降局面においては、全ての区間でフラットがインクライン(45°)よりも大きな筋活動を記録しています。

これらの報告を結果だけみると、大胸筋上部を鍛えるために特別インクラインベンチプレスをやる必要はなさそうに思えますね。

実際にどの研究もフラットなベンチプレスをやることを支持している形で締めくくられています

さて、フラットベンチプレスさえしてればいいように感じますが、本当にそうでしょうか?まずは各論文の注意点を考察していきます。

各論文の注意点、考慮しないといけない点

紹介した論文のみで、単純に比較、検討することはできません。各論文で気になる点を列挙していきますね。

インクラインの角度

まず最初に紹介した半田らの研究1)に関して、60°というのは非常にきつい角度になります。さすがにここまできつい角度だと肩の前部へ刺激が分散されてしまう可能性があります。胸筋上部を鍛えるためにここまで角度を付けるのは中々想像ができないと思います。

熟練されたトレーニーであっても、このレベルの角度だと肩部の筋群をメインで使用してしまいます。なので、大胸筋上部への刺激は明らかにデクラインベンチやフラットベンチに比べて落ちます。実際、肩周辺の筋活動が活発になっていました。報告の中でも三角筋と前鋸筋に負荷が多くかかっていたことがわかっています。

また、各論文全体を通して、インクラインの角度が同じ条件で比較できないことも考慮に入れておく必要があります。

測定がスミスマシン

こちらも最初に紹介した半田らの研究1)についてになります。

ベンチプレスの研究はフリーウェイトによるものが多く占めており、実際、トレーニングを行う際にもフリーウェイトで行う場面が多いと思います。マシンでの計測では被験者のテクニック等に左右されず、一定の計測ができる可能性がありますが、他の研究との比較、と言う観点でみると単純に比較はできないと思われます。

手の間隔について

前述しましたが、Chrisらの研究2)で取り扱っているnarrowは肩峰間隔100%なので狭すぎです。Jakobらの報告4)では肩峰間隔150%ですし、手の間隔による条件も全てが同一ではありません。これらの条件も少なからず、筋活動に影響を及ぼす可能性はありますね。

また、一般的にnarrowとされる手の間隔を定義するのは少し難しいかもしれません。

バーベルの動作範囲の定義

Jakobらの報告4)ではバーベルの下降、上昇局面を分割して考察されていましたが、その他の研究についてはバーベルを下降、上昇位置の言及がありませんでした。バーベルの落としていく位置によって筋群のストレッチ感が変わるため重要です。

肘関節の角度(脇の角度)

別記事でも紹介をしたことがありますが、各関節の角度によって筋群にはモーメントが発生します。そのモーメントによって活動が活発化する筋肉も変化しますので、より精度の高い分析を行うためには関節角度についても定義しておくことが必要であると思われます。

被験者の条件

今回紹介した論文は比較的、被験者の人数が少ないこと、トレーニング経験がある被験者対象としているものが多いです。傾向として間違ってはいないと思われますが、一概にこの結果が全てということはできません。(他の数多くの研究でも大胸筋上部においてはインクラインベンチよりもフラットベンチの方がすぐれているという結果が残っていますが…..)

インクラインベンチプレスの有意点

インクラインベンチのポジティブな面ももちろん存在しています。

バーベル上昇局面(26〜50%区間)において、インクライン(30°と45°)はデクラインとフラットよりも大きな筋活動を記録した。4)

この点はインクラインベンチプレスを実施する価値をもたらすのではないでしょうか。

特に中上級者において、インクラインベンチプレスの動作内で大胸筋上部の筋活動が一番高まる範囲が存在することは大きな意味になります。

フラットベンチプレスのみで理想的な大胸筋上部を形成できるのか?

実際、フラットベンチプレスだけでいいのか?という点は誰しもが思う点ですよね。

健康維持のトレーニングや軽い筋トレを目的とする人で大胸筋を鍛えたいならフラットベンチプレスの効果だけで問題ないとは思います。(実際、フラットベンチプレスだけでトレーニング効果が実感できると思います。)

実際にインクラインベンチプレスはフラットベンチプレスよりも重量を扱えませんし、その点においてもフラットの方が胸には効果的です。

(が、本格的にボディーメイクをしている人が、ベンチプレスだけで大胸筋上部まで完璧な筋肉をつけようというのは、難しいかもしれません。)

それでは、これまで述べてきたことをまとめたいと思います。

まとめ

・インクラインベンチプレスは大胸筋上部を鍛える目的として“万人共通で有効”とまでは言えない(インクラインベンチプレスは他の傾斜に比べて大胸筋上部に大きな刺激を与えることができない=「他の傾斜よりも、大胸筋上部を鍛えるのに効果的とは言えない」)
・フラットベンチプレスでもインクラインベンチプレスと同等、またはそれ以上の効果を得られる

各研究報告から考察して、フラットベンチプレスに取り組んでいるのであれば大胸筋上部を鍛える手段としてインクラインベンチプレスを取り入れる必要はあまりないように感じます。故に、大胸筋上部においてフラットベンチプレスが最強であると言われているのです。基礎フォーム(フラットベンチ)が確立されていない人や初心者などは特に、です。(身体の角度変化により相対的に腕の角度が変化するため、適切な動作で実施できない可能性があります)

ですが、必ずしも筋電図に数値として出ていないためインクラインベンチの効果はあまり期待できない、という結論はおそらく多くの中堅以上のトレーニーに反対されると思います。

インクラインベンチの角度、手の間隔、動作範囲、関節角度など、これらの要素を変えたとしても筋電図の“数値”には出ないかもしれません。ただ、中上級者のトレーニーならこれらを少し変えるだけで“効き”が全く違う、という体感があるはずです。胸筋上部を意識でき、刺激を与える技術も持っているからですね。そうでなければこの種目が認知され、今まで残ってくることはなかったはずだからです。(実際、インクラインベンチの有効性も部分的に存在していますしね。)

※以下、個人的な思いです。

重要なこと。それは、このような研究や報告があることを知り、内容を踏まえた上で、筋電図には表れない微妙な違いを感じられるように質の高いトレーニングを心がけることではないでしょうか。

研究結果は重要です。参考になる情報も数多く存在していますが、それだけを盲目的に信じることがよいかは疑問です。なぜなら、ある程度自分がやってきた経験や、感覚も重要な要素であるからです。

研究結果、といっても万人共通ではありません。多くの人に当てはまるであろう結果にすぎないわけです。多くの情報で溢れかえっていますが、個人個人で、骨格や筋肉、経験、才能が異なります。

これらを認識した上で、日々トレーニングに励むことが大切です。

日々のトレーニング一つ一つの積み重ねが自分自身に絶対的に当てはまる「研究」になるのではないでしょうか。

トレーニングは奥が深いです。

参考文献

1)Electromyographic Analysis of the Agonist Muscles During Commonly Prescribed Resistance Training Exercises,半田 徹,人間科学研究 22(補遺号), 125-126, 2009-03-25

2)Effects of Variations of the Bench Press Exercise on the EMG Activity of Five Shoulder Muscles,Barnett, Chris, Kippers, Vaughan, and Turner, Peter ,1995,Journal of Strength and Conditioning Research 9 (4) 222-227

3)The Effects of Bench Press Variations in Competitive Athletes on Muscle Activity and Performance,Atle Hole Saeterbakken,Dag-André Mo Suzanne Scott, and Vidar Andersen,J Hum Kinet. 2017 Jun; 57: 61–71.

4)Lauver JD, Cayot TE, Scheuermann BW. Influence of bench angle on upper extremity muscular activation during bench press exercise. Eur J Sport Sci. 2016;16(3):309-16. doi: 10.1080/17461391.2015.1022605. Epub 2015 Mar 23. PMID: 25799093.

 

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