効率よく痩せるために必要な運動時間と強度とは?”痩せる”有酸素運動を理解しよう!

健康

ダイエットで運動を取り入れることは、食欲を抑え、エネルギー消費量を高めることでリバウンドを防ぐとともに、生活習慣病の原因である内臓脂肪の減少にも有効であることが報告されています。

ダイエットのための運動といえばジョギングやサイクリング、スイミングなどの有酸素運動がイメージされます。
では、もっとも脂肪を減らすための運動強度、運動時間、運動様式をどのように考えたら良いのでしょうか?

今回は、もっとも脂肪を減らす有酸素運動の方法論について近年の研究報告をご紹介します。

この記事でわかること
・脂肪を減少させる有酸素運動の方法論

それでは早速見ていきましょう。

【ダイエット/減量】”痩せる”有酸素運動を理解する

ヒトのエネルギー源

まず大前提として、私たちの動作は全て筋肉の収縮で起こっています。
そのエネルギー源が”ATP(アデノシン三リン酸)”です。

動作を継続するためには、ATPを分解して、エネルギーを生成する必要があります。
しかし、筋肉に存在するATPが少ない為、何らかの形で補う必要があります。

その補う方法(メカニズム)は下記の3パターンがあります。
クレアチンリン酸系
解糖系
有酸素系

この補給方法は運動の強度や時間で使い分けられています。

陸上で例えてみましょう。

まずは100m。100mを全力で走るという動作は高強度で短時間の運動になります。このような高強度短時間の運動は筋肉にあるクレアチンリン酸を分解してATPを補充します。クレアチンリン酸系ですね。

次の例は、400mです。100mと比べると時間が少し長くなり、運動強度は中〜高強度といったところでしょうか。この場合は、筋肉にある糖を分解してATPを補充します。解糖系ですね。

このような中〜高強度の運動で行われるエネルギー補充方法は、酸素を使わずにATPを補充するため、無酵素性代謝ともいわれています。(無酸素運動)

一方、軽い強度のランニング(ジョギング)やウォーキングでは、筋肉のミトコンドリアが酸素を使用してATPを生成します。有酸素系ですね。低強度で長時間の運動が対象となります。よく言われる有酸素運動というものはこれに該当します。

このように筋肉へのエネルギー補充は、運動強度や運動時間に応じてその方法が異なっています。

脂肪を燃焼させる運動強度

疑問さん
疑問さん

ダイエットには有酸素運動がいいと聞いたので、頑張って速いペースでジョギングをしてきました!効果ありですかね???

ざっきー
理学療法士ざっきー

ジョギングやサイクリングは追い込めば追い込むほど脂肪分解が促進されるか、というとそうではありません。運動の強度によって脂質と糖質の消費される割合が異なるからです。詳しくみていきましょう。

vanLoonらによると、脂質が有位に酸化される運動強度は「運動中も会話ができるレベル」であるとしています。1)

研究概要
被験者は8人。30分間、自転車を漕がせながら徐々に運動強度を高くする。(安静時→40%→55%→75%)その際の筋グリコーゲン、血液中のグルコース、血液中の脂肪酸、中性脂肪(トリアシルグリセロールなど)の酸化度合いを計測。結果、脂肪の酸化に関与する血液中の脂肪酸および中性脂肪の利用は運動強度の40%〜55%でもっとも高く、75%では減少することが示された。

※1)より引用、編集

もっとも脂肪を利用する割合の高い運動強度は「40-60%程度の中等度」とこれまでの報告2)がありますが、本研究でもその報告を支持するものとなっています。

では、中等度の運動強度とはどれくらいの強度でしょうか。

運動強度を把握するための指標があります。そのひとつが「運動中の会話」です。

ジョギングをイメージしてみてください。

低〜中強度の軽いジョギングであれば運動中に会話をすることができますね。しかし、高強度になると、呼吸が荒くなり、酸素需要が高まります。

全力疾走中に会話なんてできませんよね。ここから中等度の運動強度の目安は「会話ができる程度」とされているのです。

さらに客観的な目安が欲しい場合には「心拍数」を計測するとよいでしょう。

中等度の運動とは最大予測心拍数の50〜70%程度の心拍数で実施できるものとされています。
最大予測心拍数は「208-0.5〜0.7×年齢」で算出できます。

例えば年齢が30歳であり、60%の中強度で有酸素運動を行う場合、最大予測心拍数は190(208-0.6×30)となり、中強度の運動の目安となる心拍数は1分間に「114回(190×0.6)」となります。

ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動は、会話ができる程度の中強度の運動強度(最大予測心拍数の70%以下)で行うことがもっとも脂肪を減らすのに適した運動強度になるのです。

では、より効果的に脂肪を減らすためには、どのくらいの運動時間を行えばよいのでしょうか。

運動時間

短時間の運動ではエネルギー源の割合が糖質が脂質よりも優位ですが、中等度の運動を30分以上行うとその割合が反転し、脂質が糖質を上回ることが示唆されています。そのため、脂肪を優位に分解するためには、中等度の有酸素運動を30分以上行うことが必要であるとされています3)

4時間の運動時間における脂肪の酸化速度を調査したkleinらの研究結果では、脂肪の酸化は30分までに急速に高まり、その後も運動時間の増加ととも促進されることが示唆されています。4)

これは、主にアドレナリンの分泌量の増加が要因とされています。運動時間の増加とともにアドレナリンの分泌量が増加し、リパーゼが活性化することよって脂肪(トリアシルグリセロール)から脂肪酸が血液中へ放出され、エネルギー源として消費されるのです。

これらの研究から、有酸素運動で効果的に脂肪を酸化させるためには「30分以上」は運動することが推奨されているのです。

疑問さん
疑問さん

ターゲットとするエネルギー消費に関して、時間を考慮する必要があるのですね。

脂肪を燃焼させる有酸素運動

では、「中強度の運動強度で30分以上の有酸素運動」と聞いて、何を思い浮かべますか?

ジョギングやサイクリングなど有酸素運動といっても種類は様々です。

今回は代表的な有酸素運動であるジョギングとサイクリングについて、みていきます。

ジョギングはサイクリングよりも脂肪燃焼に適している?

Achtenらの研究5)をみてみます。Achtenらはサイクリング経験者を対象として、徐々に運動強度が増加する運動テストをサイクリングとジョギングにおいて実施し、その際の脂肪酸化速度を計測しました。結果、どの運動強度においてもジョギングはサイクリングよりも脂肪の酸化が高いことを報告しています。

併せて、Capostagnoらの研究6)をみてみます。今回は、サイクリング、ジョギングともに経験している被験者を対象としています。それぞれの運動テストを行い、脂肪の酸化速度を調査したところ、運動強度の60%である中強度では、ジョギングはサイクリングよりも脂肪の酸化が高いことを報告しています。

これらの報告から考えると、同じ運動強度であれば、ジョギングはサイクリングよりも脂肪を分解させやすいということが分かります。

なぜジョギングは脂肪を分解させやすいのか

ジョギングとサイクリングを比較して、なぜジョギングの方が脂肪を分解させやすいのでしょうか。

理由は大きく2つあります。

①全身運動であること

ジョギングは前進運動であるのに対し、サイクリングは局所的な運動です。サイクリングは主に脚を使った運動ですよね。

つまり、ジョギングよりも脚への相対的な運動強度が高くなります。運動強度の増加は、エネルギー源を脂質から糖質に移行させます。

そのため、ジョギングよりもサイクリングでは脂肪の酸化が少なくなると推察されています。

②筋繊維タイプの違い

ジョギングでは多くの割合でタイプⅠ線維の遅筋が収縮し、サイクリングではタイプⅡ線維の速筋の収縮割合が多くなる7)と報告されています。タイプⅡ線維のエネルギー代謝の仕組みは有酸素系ではなく、解糖系が主になります。

そのため、サイクリングでは脂肪の酸化が低くなることが示唆されています。

疑問さん
疑問さん

脂肪を分解させる、という観点からみるとジョギングの方がサイクリングよりも適しているということですね。

ざっきー
理学療法士ざっきー

その通りです。これらの研究報告やメカニズムから脂肪を燃焼させるための有酸素運動はジョギングがよいとされています。

まとめ

今回のまとめです。

脂肪を分解させる有酸素運動
・長い時間(30分以上)
・ゆっくり(中等度の運動強度)
・走る(サイクリングよりもジョギング)

こうみるととてもシンプルですよね。

しまった、20分のジョギングで終わっている…という人はあと少しだけ、頑張ってみてください。

推奨される運動や筋トレのメカニズムを理解することでより効果的なトレーニングをデザインすることができます。

目的に応じて、運動強度、運動時間、運動様式を調整してみましょう。

参考文献

1)van Loon LJ, Greenhaff PL, Constantin-Teodosiu D, Saris WH, Wagenmakers AJ. The effects of increasing exercise intensity on muscle fuel utilisation in humans. J Physiol. 2001 Oct 1;536(Pt 1):295-304. doi: 10.1111/j.1469-7793.2001.00295.x. PMID: 11579177; PMCID: PMC2278845.

2)Romijn JA, Coyle EF, Sidossis LS, Gastaldelli A, Horowitz JF, Endert E, Wolfe RR. Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am J Physiol. 1993 Sep;265(3 Pt 1):E380-91. doi: 10.1152/ajpendo.1993.265.3.E380. PMID: 8214047.

3)Powers SK, et al. Exercise Physiology: Theory and Application to Fitness and Performance. McGraw-Hill Humanities Social 2014.

4)Klein S, Coyle EF, Wolfe RR. Fat metabolism during low-intensity exercise in endurance-trained and untrained men. Am J Physiol. 1994 Dec;267(6 Pt 1):E934-40. doi: 10.1152/ajpendo.1994.267.6.E934. PMID: 7810637.

5)Achten J, Jeukendrup AE. Relation between plasma lactate concentration and fat oxidation rates over a wide range of exercise intensities. Int J Sports Med. 2004 Jan;25(1):32-7. doi: 10.1055/s-2003-45231. PMID: 14750010.

6)Capostagno B, Bosch A. Higher fat oxidation in running than cycling at the same exercise intensities. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2010 Feb;20(1):44-55. doi: 10.1123/ijsnem.20.1.44. PMID: 20190351.

7)Tsintzas K, Simpson EJ, Seevaratnam N, Jones S. Effect of exercise mode on blood glucose disposal during physiological hyperinsulinaemia in humans. Eur J Appl Physiol. 2003 Apr;89(2):217-20. doi: 10.1007/s00421-002-0781-3. Epub 2003 Feb 1. PMID: 12665988.

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