
前の記事でアイソメトリックについてはよく分かりました。
今回はアイソトニックについて教えて欲しいです!

アイソトニックについてですね!
今回もわかりやすく説明しますので、お任せください。
・アイソトニックトレーニングとは
・アイソトニックトレーニングのメリット・デメリット
アイソトニックトレーニング
筋収縮様式について
筋肉の収縮様式は大きく3種類存在しています。分類している基準は”関節運動をしているか否か“です。
①等尺性収縮(アイソメトリック コントラクション)
→関節運動なし、静的な筋収縮
②等張性収縮(アイソトニック コントラクション)
→関節運動あり、動的な筋収縮
③等速性収縮(アイソキネティック コントラクション)
→①と②のメリット、デメリットを踏まえて作られた筋収縮
(日常動作にない動き)
大枠を理解しておくことがひとまず重要です。
アイソトニック(等張性筋収縮)って?

求心性収縮(短縮性収縮、コンセントリック)

では二つ目。
遠心性収縮(伸長性収縮、エキセントリック)
ダンベルを持ち上げ、矢印の方向へ動かす時の上腕二頭筋が遠心性収縮にあたります。

コンセントリックとエキセントリックの判別
重力と同方向の動作=エキセントリック

→エキセントリック(遠心性、伸長性)
どちらの筋収縮なのかを把握することは非常に重要です。
メリット
速度
アイソメトリックの回でも説明しましたが、筋トレには「特異性」というものが存在しています。トレーニングをした関節角度や速度、フォームなどの様式に沿って動作を学習していく、というものです。
つまり、動作速度が可変であるアイソトニックトレーニングは様々な動作様式に対応して効果が見込めるということです。
スポーツ特有の動作獲得、強化などにも最適です。
筋肥大に着目してみましょう。
Schoenfeldらの系統的レビューによると求心性収縮と遠心性収縮によるレジスタンストレーニングの動作速度が筋肥大に与える影響は0.5秒〜8.0秒の動作時間の範囲であれば大差がないとしています。1)
また、光川による文献レビュー(2020)2)では
トレーニング強度が低い(50%1RM 程度)場合
▶︎求心性収縮及び遠心性収縮の両方において1秒にて実施するよりも3秒以上かけてゆっくりとした速度でトレーニングした方が筋肥大に効果的
トレーニング強度が高い(67%〜85%1RM)場合
▶︎コンセントリック(求心性収縮)とエキセントリック(遠心性収縮)の両方の速度による筋肥大の程度に有意な差が見られた論文はなく、各局面において1〜3秒程度の動作時間であれば、筋肥大に大きな違いがない
▶︎速度に関係なく筋肥大が見込める
としています。
負荷
この項目に関しては言わずもがなですが負荷量の調整が容易かつ明確です。
ウエイトトレーニングなどにおいてはg単位で重りの調整ができ、筋トレ大原則である”総負荷量”を考える際にも鍵となる点です。
また、負荷は高い方がよいと思われがちですが、実際そうでもありません。低強度×高頻度でも十分に効果を発揮することができます。
その点で自重でも十分にトレーニングが行えるのでいいですね。
可動域
アイソメトリックトレーニングと比較して、圧倒的に違いがあるのが関節運動を伴うことです。
Brunoらの研究より、肘関節屈曲運動の例を紹介します。3)4)
負荷は1RMの80%(最大強度の80%の負荷)と設定し、下記2パターンのグループに分けて筋への損傷を考察しました。
・全可動域(0-130°)
・部分可動域(50-100°)
すると、部分可動域運動と比較し、全可動域で有意に筋損傷が生じ、筋肥大が生じたようです。筋肥大の増加率も全可動域で有意に高いようです。
また、負荷量に着目すると1RMの80%という設定ですが部分可動域の群で大きな重量を扱えていることが分かりました。
Gerardらの脚部への可動域変化がトレーニングに及ぼす研究では部分可動域の群と全可動域の群を比較した際に両者とも筋肉の長さが延長し、さらに全可動域の群で筋長の増加率が高いようです。5)
つまり、全可動域運動を取り入れることで、筋肉の柔軟性の向上も狙えるというわけです。
これら研究結果では部分可動域運動ではその可動域で特に筋力の向上がみられ、対して全可動域運動では全体的に満遍なく筋力の向上が確認されています。可動域に関しても「特異性」があります。
まとめると
全可動域トレーニング▶︎低重量のトレーニングの場合でも筋肥大、柔軟性の面で効果的。(安全性が高い)
部分可動域トレーニング▶︎筋肥大に加え、高重量を扱う場面や集中的に強化する部分に対して効果的。
トレーニングに合わせて関節可動域の調節を行う必要がありますね。
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筋ポンプ作用
アイソトニックトレーニングでは筋の収縮を繰り返すため筋のポンプ作用が働きます。
静脈には弁があり、血液の逆流を防いでおり、筋収縮に伴う静脈血管への機械的圧迫により、心臓方向へのみ血液を戻すことができる。筋が弛緩すると、静脈が拡張し、遠位から血液が流れ込みやすくなり、収縮−弛緩を繰り返すことで、ポンプのように心臓へ血液を戻す。6)
そして、筋収縮による筋ポンプ作用は心肺機能の促進にも働きます。
心臓に戻る血液量(静脈還流量)が増加すると、左心室容量が増え、心筋が伸長されます。そして、心筋が伸ばされれば伸ばされるほど、発生する張力が大きくなり、心筋の収縮力が増加します。※FrankStarlingの法則(心筋の長さと張力の関係)
これらの作用により心臓から1回で送り出す血液量(1回心拍出量)が増加します。
まとまると、
筋ポンプ作用
→血液循環を促進
→循環により、運動筋内の疲労物質を除去
→運動筋への十分な酸素供給
→グリコーゲンと酸素によりエネルギー産出
(酸素の利活用に関しては有酸素運動、無酸素運動によって変動するため参考程度に)
筋ポンプ作用など運動時の循環反応は数多く存在しています。
場合によりますがアイソトニックトレーニングは血流面での阻害要素が少ないということがメリットの一つでもあります。
血流循環の促進による効果は別途記事にしたいと思います。(非常に奥深い..!)
トレーニングの柔軟性
アイソトニックトレーニングは動的な動作で求心性(短縮性)、遠心性(伸長性)のいずれのトレーニングが可能です。
加えて、前述した「速度」「負荷」「可動域」の要素を自由自在にカスタマイズできるため多様なトレーニングをデザインすることが可能です。
デメリット
怪我のリスク
エキセントリック(遠心性,伸長性)でのリスク
エキセントリックのメリットでもあり、デメリットでもある点を紹介します。
コンセントリック(短縮性)とエキセントリック(伸長性)を比較した際にはエキセントリックの方が筋肥大の効果が高いと言われています。7)
トレーニングによって筋肥大を生じさせるためには、タンパク質合成が分解を上回ることが必要です。そして、タンパク質合成を促進させるためには、筋への「機械的刺激」が必要です。「機械的刺激」には、筋損傷、代謝のストレス、筋緊張の要素があります。8)
エキセントリックはその刺激の中でも筋損傷に大きく関わります。
筋肉の収縮はタンパク質であるアクチンとミオシンによって生じます。(今回は筋収縮のメカニズムについては割愛します。)
コンセントリック(短縮性)での筋収縮はアクチンとミオシンが重なり合うことで筋収縮を起こします。(滑り説)
対して、エキセントリック(伸長性)では伸長されるため、アクチンとミオシンの重なりが少なくなります。
ここで活躍するのが筋構造を支えるタンパク質である「タイチン」です。
この「タイチン」はアクチンとミオシンの重なりが少なくなった際に、バネのような役割を発揮し、ブレーキをかけてくれます。9)
この「タイチン」のバネの力によりエキセントリックではコンセントリックに比べてより高い負荷を扱えるということです。
負荷に対して動員される筋繊維が少ないため、筋損傷しやすいことが筋肥大効果が高い理由とされているわけです。
筋肥大を効果的に狙うことができるという反面、出力以上の負荷を扱うことができるため過負荷になりすぎると思わぬケガになってしまう可能性があります。
筋の疲労度や動作の熟達度等を考慮し、リスクを管理する必要がありますね。
誤動作によるトレーニング
アイソトニックトレーニングは「速度」「負荷」「可動域」など対象動作に多くの要素が関与しています。それは様々なトレーニング様式を実現できる反面、正しい動作を練習しなければ、誤動作を学習してしまう可能性があります。
ベンチプレスの例をみてみましょう。
日本パワーリフティング協会ルールブックより抜粋です。
リフターは頭、両肩、両臀部がフラットベンチの面に接触するよう仰臥しなければならない。バーは両手共に“サム・アラウンドグリップ”で握り、手掌面でバーを安全確実に保持しなければならない。両足の靴底全面は床面または足台に水平につけていること。
ベンチプレスは上記の条件のもと行う必要があります。間違った動作に繋がりやすい例を一つ挙げると、”背中のブリッジ”です。
足部を固定し、肩甲骨を内側に寄せ、ブリッジを形成することで大胸筋に刺激を入れやすくします。これにより体幹が固定され、大胸筋にも適度なストレッチがかかり、力が発揮しやすくなります。
ところが、このブリッジの意識が胸のストレッチを高めることから背中を反らすことに向いてしまうことが多々みられます。
結果、過度に背中を反り上げ、臀部もベンチの面から浮き上がる状態で動作を行ってしまいます。(特に初心者が高重量を上げようとする際に散見されます)
この動作は、脊柱に過度な負荷を与えてしまいます。
脊柱は24個の椎骨と椎間板が連なっており、椎間板が緩衝材の役割を担っていますが、極端なアーチ形をとるようにはできていません。背中を弓なりに反らせると著しいストレスと圧力が各椎間の結合部にかかり、椎間板ヘルニアなどの障害につながる恐れがあります。10)
誤動作の学習は正しい筋トレの効果を得られない上に、怪我のリスクを含んでいます。
特に動作学習の初期には、他者からのフィードバックや動作の振り返りによって正しい動作を学習する必要があります。
とはいえ、あるべき論は数多く存在していますが、自分に最適なフォームやトレーニング方法を見つけることが重要です。
まとめ
→関節運動を伴い、動的なトレーニング
→コンセントリック(短縮性、求心性)とエキセントリック(伸長性、遠心性)に分類
メリット
・トレーニングの柔軟性
→「速度」「負荷」「可動域」といった変動要素が多く、目的に合わせた効果的なトレーニングを実現可能
・筋ポンプ作用
・エキセントリックによる効率的な筋肥大
デメリット
・ケガのリスク
→エキセントリックによる過負荷
→誤動作学習によるトレーニング

アイソトニック、よくわかったぞ。
コンセントリックとエキセントリックという言葉、明日からガンガン使ってやろう。
トレーニングメニューも「速度」「負荷」「可動域」などの変動要素を気にして組み立てるようにしたいな。
あと、自分に最適な正しい動作で。

各個人に最適かつ効果的なトレーニングをデザインしていきましょう!
各動作のポイントや詳細のメカニズムについても今度どんどん更新していきます!
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