【筋トレ効果を最大化】”アルギニン”とは?効果とメカニズムを解説

筋トレ/スポーツ

筋肥大を狙う上で、”タンパク質の合成”は欠かせない要素です。

トレーニングを行うと、筋タンパク質の合成感度が高まります。そして、そのタイミングでタンパク質を摂取することで、筋タンパク質の合成を促進させ、筋肥大が生じます。

トレーニングだけでは筋肥大は生じず、トレーニングと合わせてタンパク質を摂取することで、はじめて筋肥大が生じるのです。

これが”筋トレ”と”タンパク質”がセットで扱われる理由です。

そして、現代のスポーツ医学ではタンパク質以外にもトレーニング効果を高めるサプリメントが数多く存在することが分かっています。

食品やサプリメントから摂取されたタンパク質は、体内(胃や腸)で消化され、最終的にアミノ酸にまで分解されて吸収されます。

そして、吸収されたアミノ酸は肝臓から血液中に放出され、全身に運ばれます。アミノ酸が筋肉に届くと筋タンパク質の合成が行われ、筋肥大が生じます。

この血流による全身へのアミノ酸運搬において、注目されているサプリメントが「アルギニン」です。

この記事では、筋トレ効果を高めるとされる「アルギニン」について、解説していきます。

この記事で分かること
・筋トレにおけるアルギニンの効果とメカニズム
・アルギニンの推奨摂取量

【筋トレ効果を最大化】”アルギニン”とは?効果とメカニズムを解説

アルギニンとは

アルギニンはアミノ酸の一種です。

アミノ酸は体内で生成される11種の非必須アミノ酸と、生成できない9種の必須アミノ酸に分けられます。

主に筋タンパク質の合成で使われるのは「必須アミノ酸」ですが、アルギニンは「非必須アミノ酸」であり、直接的には筋タンパク質の合成に関わりません。

アルギニンには、主に以下の作用があると言われています。

・一酸化窒素の生成促進、血流量増加
・成長ホルモンの分泌促進

この作用が筋トレ効果を高める上で重要であると考えられています。

筋トレにおけるアルギニンの効果とメカニズム

前述した一酸化窒素の生成増加、成長ホルモン分泌増加に基づき、アルギニンは主に以下の効果を生み出します。

・筋タンパク質合成の促進による筋肥大効果の向上
・エネルギー代謝促進に伴うパフォーマンスの向上

成長ホルモンが絡むため、他にも多くの効果が期待されます。

特に筋肥大を狙うトレーニーの方にとっては、筋肥大効果を高められるのは嬉しいことですよね。

筋トレ以外の面でも以下のように様々な効果があるとされています。(こちらについてはまた別の記事にしたいと思います)

・脂肪組織の減少と代謝向上
・骨密度向上
・免疫機能改善
・疲労回復

血管構造の前提知識

まず血管の構造から説明します。

血管の壁は外膜・中膜・内膜の3層構造になっています。そして、内膜の内側には血管を拡げる役割を担っている内皮細胞が存在しています。

ざっきー
理学療法士ざっきー

内皮細胞や内膜が壊れてしまい、血管が拡がりにくくなると、血管が硬くなってしまいます。これがいわゆる「動脈硬化」です。

血流量増加による筋タンパク質合成の促進

血管構造については前述しましたが、内皮細胞には血管を拡張させるきっかけがあります。

そのきっかけとなるのが、「一酸化窒素(NO)」です。つまり、一酸化窒素の量が多くなると内皮細胞が血管を拡張させ、血流量が増加するのです。

アルギニンには、一酸化窒素の産生を促進する作用があるため、それによって血管を拡げ、血流量を増やすことができるとされています。

筋トレ前後にタンパク質とともにアルギニンを摂取することで、全身の血流量が増加させ、速く、多くのアミノ酸を筋肉に届けることができ、筋タンパク質の合成を促進することができるのです。

成長ホルモン分泌増加による筋タンパク質合成促進

もうひとつ、アルギニンの作用として挙げられているのが”成長ホルモンの分泌効果”です。

成長ホルモンは骨成長やタンパク質合成の促進に関与し、筋トレにおいては欠かせない要素の一つです。

アルギニンによる成長ホルモン分泌促進のメカニズムをまとめました。

・摂取したアルギニンは体内でアミノ酸の一種であるオルニチンに変換されます。
オルニチンは成長ホルモン分泌を促進する働きがあります。オルニチンは脳の下垂体に作用し、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)の分泌を刺激します。
・アルギニンには血管拡張の作用があり、血流量が増加します。その結果、脳の下垂体への血液供給が増え、成長ホルモンの分泌が促進されます。
・また、アルギニンは尿素サイクルと呼ばれる代謝経路において、アンモニアの代謝を促進します。アンモニアは成長ホルモンの分泌を抑制する作用があるため、アルギニンのアンモニア代謝促進作用により、成長ホルモンの分泌が増加すると考えられています。

上記の通り、アルギニンには成長ホルモンの分泌を促進させる効果があると考えられており、その結果として筋肥大効果の向上を期待できるというわけです。

このように、アルギニンの血管拡張に伴う血流量増加、成長ホルモン分泌促進の作用により、筋トレ効果(筋タンパク質の合成促進)を高めると考えられているのです。

エネルギー代謝促進によるパフォーマンス向上

アルギニンの血管拡張機能、血流量増加については前述しましたが、この血流量増加はエネルギー代謝も促進します。

Aitor Viribayらによるメタアナリシスによると、アルギニン摂取により有酸素系、無酸素系の双方のエネルギー代謝を改善することが分かっています。1)

特に筋トレ(無酸素運動)においては、クレアチン再合成を改善することが示唆されており、結果的にパフォーマンスの向上が期待できるとされています。

また、血流量の増加により代謝産物や老廃物の排出も効率的に行われます。その結果、疲労物質の蓄積が減少し、パフォーマンス改善、筋疲労の回復効果についても期待できます。

(参考文献1)より引用、編集)

また、有酸素運動においてはイメージ通り、血流量の増加により酸素や栄養素が全身の組織や筋肉により多く供給されます。結果、有酸素系のエネルギー代謝が促進され、有酸素運動のパフォーマンスも向上(持久力改善、運動能力改善)します。

代謝産物や老廃物の排出を効率的に行い、疲労物質の蓄積を減少させることでパフォーマンス改善を期待できる点はこちらでも同様です。

アルギニンの推奨摂取量

Aitor Viribayらはアルギニンによる有酸素運動・無酸素運動のパフォーマンスを向上させるためには以下の摂取量が必要であるとしています。1)

トレーニング、運動パフォーマンスにおいて一時的な効果を得たい場合

一時的にパフォーマンス向上を狙いたい場合は、パフォーマンスの60~90分前0.15 g/kgの摂取を推奨しています。

体重が70kgの場合、10.5gとなりますので約10~11gを目標に摂取することになります。

トレーニング、運動パフォーマンスにおいて長期的な効果を得たい場合

長期的、継続的に効果を得たい場合には、1.5~2g/日を週に4~7回以上継続摂取します。

8週間で10~12g/日の継続的な摂取により、有酸素運動パフォーマンスと無酸素運動パフォーマンスのそれぞれにプラスの影響与えることが示唆されています。

まとめ

この記事では筋トレにおける”アルギニン”の効果とメカニズムをまとめました。

【アルギニンの作用】
・一酸化窒素の生成促進、血流量増加
・成長ホルモンの分泌促進
【アルギニンの作用によって生み出される効果】
・筋タンパク質合成の促進による筋肥大効果の向上
・エネルギー代謝促進に伴うパフォーマンスの向上
【アルギニンの推奨摂取量】
・一時的な効果を得たい場合:60~90分前に0.15 g/kg
・長期的な効果を得たい場合:1.5~2g/日を週に4~7回以上

トレーニング効果を高めるサプリメント

筋肉のもととなる筋タンパク質は24時間、常に合成と分解を繰り返しています。我々の筋肉量を維持できているのは、この合成と分解の量が釣り合っているためです。

トレーニングで筋肥大を生じさせるためには、筋タンパク質の合成が分解を上回るようにしなければならず、そのために必要になるのがタンパク質の摂取です。

トレーニングをすると筋タンパク質の合成感度が上昇し、そのタイミングでタンパク質を摂取することで筋タンパク質の合成が増加し(分解を上回り)、筋肥大が生じます。

これらの理由により「トレーニングとタンパク質の摂取はセット」と言われています。トレーニングに加え、タンパク質を摂取することで筋肥大が生じるというわけです。

ここで補足したいのは、この記事にも記載したアルギニンのように、タンパク質以外にもトレーニングの効果を高めるサプリメントが多数存在しているということです。

クレアチンは、筋肉のクレアチン量を増やすことによってATPの再合成能力を高め、トレーニングパフォーマンスを向上させます。

カフェインは、脳のアデノシン受容体に作用し、神経活動を高めるドーパミンなどの放出を促進します。これにより、運動単位の動員や発射頻度を増加させ、パフォーマンスを高めます。

筋タンパク質の分解を抑え、トレーニング効果を高めるHMB。

もちろん、筋肥大の基礎であるタンパク質も忘れてはいけません。

現代のスポーツ科学、栄養学では様々な筋トレに関する有益なことが分かってきています。

まだまだ有効なサプリメントが存在していますので、これから徐々に紹介していきます。

日々の筋トレ効果を最大限に引き出せるように、サプリメントやトレーニング理論を活用していきたいですね。

参考文献

1)Viribay A, Burgos J, Fernández-Landa J, Seco-Calvo J, Mielgo-Ayuso J. Effects of Arginine Supplementation on Athletic Performance Based on Energy Metabolism: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2020 May 2;12(5):1300. doi: 10.3390/nu12051300. PMID: 32370176; PMCID: PMC7282262.

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