「GI値」とは何かご存知でしょうか?
健康や筋トレ、ダイエットに興味のない方でも低GI食品という言葉などは聞いたことがあるのではないでしょうか。
よくわからないまま低GIの食品が身体にいいらしいから食べてる、という方もいると思います。
GI値によって食品が身体に及ぼす影響は変わります。
正しい知識がないとダイエットや健康維持のために摂っているあなたの食事も逆効果になってしまう可能性もあります。
そこで今回はGI値と身体に及ぼす影響を解説します。
・GI値について
・GI値による体への影響の違い
・GI値のスポーツやダイエットへの活用
筋トレ・ダイエットするならGI値を知っておこう
GI値とは?
GI値とはグリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で食後の血糖値上昇度示す指標です。
GIは、食品に含まれる糖質(主にブドウ糖)の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものになります。オーストラリアのシドニー大学ではグルコースを基準とした場合、GI値を以下のように分類しています。
中GI:56-69
高GI:70以上
※基準となる糖質(ブドウ糖):100
シドニー大学が公開しているGI値データベース1)(Glycemic Index)
英語のデータベースなので検索には少し難易度が高いですが正しい測定方法で調べ上げられた食品が多く掲載されているので非常に便利です。私も活用しています。
各GI値の食品例
前述したシドニー大学サイトでの食品GI値検索結果を簡単にまとめてみました。(2021年3月時点)
分類 | 食品名 | GI値 |
穀類 | 大麦 | 22 |
押し麦(茹で) | 46 | |
大豆(茹で) | 15 | |
餅米 | 87 | |
長粒米 | 76 | |
餅 | 48 | |
ライ麦パン | 50 | |
イングリッシュマフィン | 77 | |
野菜類 | 人参(茹で) | 33 |
ジャガイモ(茹で) | 49 | |
フライドポテト | 70 | |
マッシュポテト | 83 | |
さつまいも(茹で) | 44 | |
果実類 | グレープフルーツ | 25 |
りんご | 40 | |
いちご、オレンジ | 40 | |
バナナ | 47 | |
豆類 | 干しえんどう豆(茹で) | 22 |
うずら豆(蒸し)、ひよこ豆 | 33 | |
乳製品 | 脱脂乳 | 32 |
ミルク | 34 | |
菓子類 | ドーナッツ | 75 |
ピーナッツ | 13 | |
チョコレート | 49 | |
スコーン | 92 | |
加工食品 | ハンバーガー | 66 |
チーズピザ | 60 | |
ミネストローネ | 48 |
おおよそ以下のような傾向にあります。
中GI:サツマイモ、全粒粉類
高GI:パン類、ジャガイモ、白米
GIが高い食品は、一気に血糖値を上昇させるため、血液中の糖を処理するために多量のインスリンが分泌されたり、分泌が追いつかなくなるということが起こります。
逆にGIが低い食品では、糖がおだやかに取り込まれ、血糖値の上昇もゆるやかになるため、インスリンも分泌しすぎることなく、糖はすみやかに組織に吸収されます。
このようにおだやかに糖を取り込む低GIの食品を知ることは、健康的な生活を実現するためにとても重要です。
人間にとって欠かせない栄養素である炭水化物を、ゆるやかに吸収することは、急激な血糖値の上昇や脂肪をつきやすくする肥満を防ぐためにも、もちろん豊かな食生活にも、大きく関わってくるのです。
詳細な情報がわからなくても、傾向として頭に入れておくと食事選びの役に立ちます。
GI値の違いによる身体への影響
低GI食品は食後の血糖値上昇は緩やか、一方で高GI食品は食後の血糖値上昇が急激です。
急激な血糖値の上昇は体脂肪が増えやすいということがわかっていますが、なぜ体脂肪が増えやすいのでしょうか?
その答えは”血糖値が上昇した際の身体の働き”にあります。
血糖値が上昇すると身体は膵臓からインスリンを分泌して全身組織に糖を取り込みことで血糖値を下げるように働きます。
膵臓にあるβ細胞からインスリンが分泌されると、全身組織に糖(グルコース)を取り込むように作用2)します。そして、多くのグルコースが肝臓や筋肉、脂肪組織に取り込まれることになるのです。
骨格筋は他の臓器に比べて、グルコースを多く貯蔵するができますが3)、急速に多量のグルコースを摂取すると、肝臓や筋肉でも処理ができなくなります。
行き場のなくなった糖が溢れた状態になるとインスリンは脂肪組織にグルコースを取り込ませます。
脂肪組織に取り込まれたグルコースはトリグリセリド、中性脂肪に合成されて脂肪滴として貯蔵されます。これにより脂肪組織が肥大し、体脂肪が増えてしまうのです。(いわゆる’糖質’→’脂肪’として貯蔵状態)
また、筋肉と脂肪への栄養の供給は運動などの生活習慣に関わらず一定の割合で行われますので、筋肉にだけ栄養を供給して栄養を消費しようということはできないということです。
つまり、インスリンが働けば働くほど体脂肪は徐々に増えていくということになります。
体脂肪を増やす働きがあるインスリンですが、血糖値が急激に上昇するほどたくさん分泌されやすくなる性質もあるため、高GI食品の摂取はインスリン過剰分泌を招く可能性があるというわけですね。
逆に、低GI食品の摂取は血糖値の上昇を穏やかにするとともにインスリンの分泌も穏やかになるため体脂肪が合成されにくくなります。
この理由から、「ダイエットの際は低GI食品摂ろう」、「血糖値をあげない食事をしよう」と言われるのです。
以下の記事で糖質、インスリンの関係性について触れていますので参考にしてください。
血糖値が上がりにくい食べ物とは?
「カロリーが高い」=「血糖値が上昇する食べ物」とは限りません。

血糖値が上がりやすいのは、カロリーが高い食べ物」であると思っていました。

そう考えている人は少なくありませんね。必ずしもそうとは限らないのです。
一般的に、血糖値が上がりやすいのは、エネルギーとして活用されやすいごはんやパン、果物、砂糖などの炭水化物の多い食品と言われています。ついでタンパク質が多く含まれている肉類や魚介類、卵、乳製品など、そして油の多い食品が続きます。
しかし、血糖値に影響するからといって、炭水化物を食べないと、栄養バランスが悪くなり、食事の満足感も得られません。結果、タンパク質や脂肪などを過剰に摂りすぎることに繋がり、悪循環を招いてしまいます。
血糖値が上がりやすい炭水化物ですが、昨今の研究から、同じ量の炭水化物を含む食品でも食物繊維量により血糖値が急激に上昇するものとおだやかに上昇するものがあるということが分かっています。
たとえば、先ほどの表では同じパンでも、ライ麦パンなら低GI、イングリッシュマフィンは高GIにあたります。
GI値を知る方法・調べ方
私たちが普段口にする食品は数が膨大すぎるので、一つ一つ把握することは非常に困難です。
また、GI値は色々なWebサイトや文書で公開されていますが、同じ食品なのに数値がバラバラだったり測定できない食品まで掲載されていたりします。
これには何点か理由がありますので、頭に入れておくことが大切です。
基準が異なる
GI値はブドウ糖を基準に測定することになっていますが、
西洋の食生活を考慮して食パンを基準に測定している場合があります。
調理方法で変化する
GI値は血糖値が上昇する度合いを示すもののため、同じ食品でも調理方法によってGI値が変化します。
同じ食品でも茹で、蒸し、生でGI値は異なります。

調理方法で変わるんですね…
同時に食べる食品で変化する
同時に食べる食品によってもGI値は変化します。
単純に炭水化物のみを食した場合と、炭水化物+食物繊維を多く含む食品を食した場合では後者の方が血糖値の上昇が穏やかになることが想像できますよね。
なので、色々な食材が入っている料理となると正確なGI値を測定することはより困難になります。
これらが正確なGI値を把握することが困難とされる理由です。
ネット上で公開されているGI値を参照しつつ、素材や調理方法による大まかなGI値傾向を把握することが重要です。
GI値は食品によって決まっているので食材ごとに大体頭に入れておくと普段の食事にも役立ちますね。
データベースを活用する
前述した、シドニー大学が公開しているGI値データベース。1)(Glycemic Index)
正確な情報を手軽に検索できるものを活用しましょう。
GI値を筋トレやダイエットに活用する
筋トレに活用する
筋肥大において糖質の摂取とインスリンの働きは非常に重要です。
糖分・アミノ酸を筋肉に運ぶインスリンの働きが活発であるほど多くの栄養が筋肉に運ばれるからです。
結果、筋タンパク質合成が促進します。
筋肉を発達させる筋タンパク質合成は筋肉で起きますが材料となるタンパク質だけでなく燃料となる糖質がないと活発に行われません。
また、肝臓に運ばれた糖は筋肉を動かすためのエネルギー(グリコーゲン)として活用されるため、筋トレに合わせて糖質を摂取することはエネルギー供給と筋合成の両面において効果があるということです。
筋タンパク質の合成は筋トレ中〜筋トレ後に活発になります。
トレーニング中、後の糖質摂取が必要ですが低GI値食品では消化吸収が間に合いません。
そこで活躍するのが高GI食品です。
中でも粉飴に代表されるデキストリン類といった食品です。
マルトデキストリンなどは手軽に摂取することができるのでおすすめです。
高GI食品はすぐに血糖値をあげてくれてインスリンを大量に分泌するように身体に働きかけてくれます。
これによってエネルギー補給をしつつ、筋トレで得られる刺激を無駄なく筋肥大に変換することができます。
つまり、高GI食品は身体が急速にエネルギーを欲しているときにピッタリな食品というわけですね。

活用の仕方が重要なんですね!
ダイエットに活用する
前述の通り、筋トレで身体を大きくする際には高GI食品が有効です。
一方、ダイエット(特に減量する場合)には低GI食品が有効です。
低GI食品は血糖値を緩やかに上昇させるので、食べた食品の栄養が急激に体脂肪となることを防ぎます。そのため、同じカロリー総量を摂取する場合でも低GI食品で食べていた方が太りづらい・痩せやすいというわけです。
また、高GI食品を含む料理を食べたいという場合でも低GI食品と組み合わせることで血糖値上昇を和らげる効果もあります。
血糖値の変動が小さいと実は精神的にもいいことがあります。
急激な血糖値の変動はイライラや吐き気を起こすことがありますが血糖値の変化が小さければそのような症状は現れません。(血糖値の変動はホルモンの分泌異常を引き起こし、脳や身体の健全な働きに影響を与えると言われています。うつ病と血糖値コントロールの関連性についても数多く報告されています4))
しかも、血管系にも負担が小さく済むので生活習慣病などの恐れがある方にとっては食事改善にも役立ちます。
ダイエットだけでなく健康管理も活用できるため低GI食品と聞いたらチェックしておくことがオススメです。
まとめ
今回はGI値について、また、筋トレやダイエットへの活用論を解説しました。
普段口にしているもの全部のGI値を把握するのは大変ですが、特に高GI値の食品だけ覚えておく、食品の傾向を知っておく、というだけでも十分効果があります。
高GI食品:血糖値の上昇が急激。急速なエネルギー生産や筋合成に効果的。
低GI食品:血糖値の上昇が穏やか。体脂肪の合成が起きにくく、減量やダイエットに効果的。
食品のGI値を知ることは、健康的な生活を実現するために重要なことです。
GI値について正しい理解をして普段の生活や筋トレ、ダイエットに活かして頂ければと思います。
参考文献
1)http://www.glycemicindex.com/
2)膵β細胞における代謝ー分泌連関からみたヒトの糖代謝異常,相澤 徹,信州医誌53(2):63-72,2005
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