【筋トレ】コーヒーで筋トレパフォーマンスが向上する理由。エビデンスをご紹介。

筋トレ/スポーツ

筋トレやスポーツをしている中で、
”コーヒーがパフォーマンスを高める”と聞いたことがある方も多いでのではないでしょうか。

今回はコーヒーがパフォーマンス向上に寄与するエビデンスをご紹介します。

この記事でわかること
・カフェインの効果
・カフェインが筋トレパフォーマンスを向上させるエビデンス

コーヒーで筋トレパフォーマンスが向上する理由

カフェイン効果に注目されるきっかけとなった研究

それは、1907年にRiversらによって行われた研究になります。1)

Riversらはエルゴグラフと呼ばれる装置を用いて、カフェインによる筋疲労への影響を調査しました。

※エルゴグラフ:筋肉の作業能力、疲労度などの計測、記録器

具体的には、被験者は人差し指で重りがついた紐を引っ張ります。

時間経過で疲労が溜まることで、人差し指が伸びたり、引きが甘くなったりします。

この動きを記録するというわけですね。

Riversらはこの計測をカフェイン摂取の有無によって被験者を分類しました。

カフェインを摂取したグループと摂取していないグループを比べると、
カフェインを摂取したグループでは筋疲労がより少なくなることが示されました。

このRiversらの研究により、世界で初めてカフェインが運動のパフォーマンスを高めることが示唆されることとなりました。

この研究がきっかけとなり、世界中でカフェインの研究が進められるとともに、アスリートの多くがカフェイン摂取に関心を持つようになりました。

カフェインが運動パフォーマンスを向上させる理由

カフェインは筋肉のエネルギー効率を高める?

答えはNoです。

Grahamらはカフェイン(6 mg kg-1)の摂取が、ヒトの定常状態の運動中の筋肉の炭水化物と脂肪の代謝に及ぼす影響を調べました。2)

研究では、若い男性被験者10人を被験者とし、2回(プラセボとカフェインの摂取後)に1時間の運動(最大酸素消費量(VO2、max)の70%)を行い、脚の代謝を観察しました。

その結果、カフェインの摂取が交感神経系を刺激したが、観察された脚の炭水化物、脂肪の代謝を変化させなかったことを示唆しています。

カフェインは筋肉に作用しているわけではなさそうですね。

ではカフェインは身体のどの部分に作用するのでしょうか。

カフェインは脳に作用する

Motlらは中強度のサイクリング運動中の脚の筋肉痛の知覚に対するカフェインの大量摂取の影響を調べました。3)

男性16名を被験者とし、カフェイン(10 mg x kg(-1)体重)とプラセボのいずれかを摂取し、サイクリング運動(60%VO(2peak))を30分間行いました。

運動中に、脚の筋肉痛の知覚、ならびに作業速度、心拍数、および酸素摂取量(VO(2))を記録し分析したところ、カフェインの高用量投与後、脚の筋肉痛の評価は有意かつ中程度に減少した、と報告しています。

この結果はカフェインが運動パフォーマンスを改善することを示すこれまでの報告が、カフェインの「痛覚鈍麻特性」によって部分的に説明できる可能性を示唆しています。

私たちは運動によって疲労を感じると、運動のパフォーマンスが低下しますよね。

これは脳にある痛みや疲労などの信号を受け取るアデノシン受容体が脳の神経細胞に働きかけ、細胞の活動を抑えてしまうからです。

カフェインはこのアデノシン受容体に作用して、その感受性を低下させる作用があります。

そのため、筋疲労を感じる時間が遅くなり、運動のパフォーマンスを向上させることができるとされています。

筋疲労に関しては改善効果があることがわかりました。

では筋力にはどんな影響を与えるのでしょうか。

カフェイン摂取が筋力に与える影響

筋力は筋肉量と神経活動によって表されます。

筋力の70%は筋肉の体積、残りの30%は脳や脊髄にある神経細胞の活動が関与していることがわかっています。

そして、前述したように神経細胞の活動にカフェインが作用することが分かっています。

カフェインはアデノシン受容体の活動を抑えることで、筋力に関与する神経細胞の活動を高めることが示唆されています。4)

さらに別の研究をみてみましょう。
Behrensらは最大筋力とカフェインの影響を調査しました。

研究内容はトレーニング経験のある被験者14名を集め、カフェインを摂取したときと摂取していないときの最大筋力を計測するというものでした。

計測はいくつかの筋活動パターン(等尺性収縮、求心性収縮、遠心性収縮)で行われました。

その結果、カフェインを摂取することによって全ての筋活動パターンにおいて最大筋力が向上したと報告しています。

つまり、カフェイン摂取は筋収縮様式に関係なく、筋力増加を誘発したことを示唆しています。

疑問さん
疑問さん

カフェインの効果ってすごいんですね。

コーヒーでも同様の効果が得られる?

カフェインを含む代表的な飲み物といえばコーヒーでしょう。
コーヒーの摂取でも同等の効果が得られるのではないかと考える人も多くいました。

そこで、研究を行なったのがRichardsonらです。

Richardsonらはコーヒーの摂取によって、筋トレのパフォーマンスが向上することを明らかにしました。6)

研究概要は以下の通りです。

被験者:トレーニング経験ありの男性9名
内容:下記の条件毎でスクワットとベンチプレスを最大筋力の60%の重量で行う。なお、疲労困憊になるまで行い、その総負荷量を計測する。
条件:①砂糖水(プラセボ)②コーヒー(カフェイン入り)③コーヒー(カフェインレス)④無水カフェイン5mg/kg
結果:スクワット、ベンチプレスともにカフェイン入りコーヒー、無水カフェインがプラセボやカフェインレスのコーヒーに比べて、有意な総負荷量の増加が認められた。また、カフェイン入りコーヒーは無水カフェインよりも高い総負荷量を示した。

※ベンチプレスの総負荷量(6)引用、編集)

※スクワットの総負荷量(6)引用、編集)

この研究結果から、コーヒーでカフェインを摂取することにで無水カフェインを摂取するよりも筋トレのパフォーマンスが向上することが示唆されました。

では、なぜコーヒーが無水カフェインよりも効果を示したのでしょうか。

カフェインは摂取方法によって効果が異なるとされています。

カフェインは液体で摂取することによって、口の中から吸収することが可能となり、吸収率が高くなります7)

錠剤やカプセルで摂取するよりも、液体摂取の方が吸収率が高いということです。
このことからカフェイン単体で摂取するよりも、コーヒーで摂取することによって吸収効率が高まったことが推測されます。

コーヒーに含まれる成分

また、コーヒーに含まれるポリフェノールやフラボノイドには抗酸化作用があります。

Braakhuisらの報告によると、ポリフェノールを摂取することで、運動による酸化を防ぎ、運動パフォーマンスを向上させることが報告されています。8)

このようなポリフェノールなどの抗酸化作用がカフェインの効果と相乗して筋トレのパフォーマンスを向上させることが考えられるのです。

Richardsonらの報告でも、カフェインをコーヒーで摂取することは、カフェインの吸収効率を高め、コーヒーの他の成分と合わさることによって筋トレのパフォーマンスを向上させると示唆しています。6)

疑問さん
疑問さん

様々な効果が相まってコーヒーは筋トレパフォーマンスを向上させるのですね。では、いつ摂取するのが効果的なのでしょうか。

カフェイン摂取量とタイミング

Richardsonらの研究では、トレーニングの1時間前に体重1kgあたり5mgのカフェインを摂取しています。

これは体重60kgだと300mgのカフェインが必要になるということです。

この量を摂取するためには、約500mlのコーヒーを飲む必要があります。

疑問さん
疑問さん

500mlのコーヒーですか..。なかなかの量ですね。

ざっきー
理学療法士ざっきー

確かに500mlは結構な量です。しかし、それほど多くの量を摂取しなくても効果がある可能性があると考えられています。

Richardsonらは3mg/kgのカフェインでも運動パフォーマンスが高まるという過去の報告に着目し、筋トレにおいても3mg/kgのカフェインの摂取によりパフォーマンスを高められる可能性があると述べています。

これは体重60kgだと180mgのカフェイン量に相当します。

このカフェインの量であれば、そこまで苦ではないでしょう。
トレーニングの1時間前に体重(kg)×3mgのカフェインを摂取してみると良いかもしれません。

コーヒーの効果(おまけ)

コーヒーにはカテコールアミンの分泌増加による集中力や気分の向上効果もあります。9)

疑問さん
疑問さん

コーヒー…いいことだらけじゃないですか..。

まとめ

カフェインには筋力を向上させる十分な効果が示されています。
そして、コーヒーによるカフェインの摂取が筋トレのパフォーマンスを向上させることが示唆されているのです。

さあ、コーヒー1杯飲んで筋トレしましょうか!

参考文献

1)Rivers WH, Webber HN. The action of caffeine on the capacity for muscular work. The Journal of Physiology. 1907 Aug;36(1):33-47. DOI: 10.1113/jphysiol.1907.sp001215. PMID: 16992882.

2)Graham TE, Helge JW, MacLean DA, Kiens B, Richter EA. Caffeine ingestion does not alter carbohydrate or fat metabolism in human skeletal muscle during exercise. J Physiol. 2000 Dec 15;529 Pt 3(Pt 3):837-47. doi: 10.1111/j.1469-7793.2000.00837.x. PMID: 11118510; PMCID: PMC2270224.

3)Motl RW, O’Connor PJ, Dishman RK. Effect of caffeine on perceptions of leg muscle pain during moderate intensity cycling exercise. J Pain. 2003 Aug;4(6):316-21. doi: 10.1016/s1526-5900(03)00635-7. PMID: 14622688.

4)Kalmar JM. The influence of caffeine on voluntary muscle activation. Med Sci Sports Exerc. 2005 Dec;37(12):2113-9. doi: 10.1249/01.mss.0000178219.18086.9e. PMID: 16331138.

5)Behrens M, Mau-Moeller A, Weippert M, Fuhrmann J, Wegner K, Skripitz R, Bader R, Bruhn S. Caffeine-induced increase in voluntary activation and strength of the quadriceps muscle during isometric, concentric and eccentric contractions. Sci Rep. 2015 May 13;5:10209. doi: 10.1038/srep10209. PMID: 25969895; PMCID: PMC4429543.

6)Richardson DL, Clarke ND. Effect of Coffee and Caffeine Ingestion on Resistance Exercise Performance. J Strength Cond Res. 2016 Oct;30(10):2892-900. doi: 10.1519/JSC.0000000000001382. PMID: 26890974.

7)Liguori A, Hughes JR, Grass JA. Absorption and subjective effects of caffeine from coffee, cola and capsules. Pharmacol Biochem Behav. 1997 Nov;58(3):721-6. doi: 10.1016/s0091-3057(97)00003-8. PMID: 9329065.

8)Braakhuis AJ, Hopkins WG. Impact of Dietary Antioxidants on Sport Performance: A Review. Sports Med. 2015 Jul;45(7):939-55. doi: 10.1007/s40279-015-0323-x. PMID: 25790792.

9)Pickering C, et al. Are the Current Guidelines on Caffeine Use in Sport Optimal for Everyone? Inter-individual Variation in Caffeine Ergogenicity, and a Move Towards Personalised Sports Nutrition. Sports Med. 2018 Jan;48(1):7-16. doi: 10.1007/s40279-017-0776-1.

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